私が初めて山中透さんにお会いしたのは長野県の茅野市民館でした。
2016年に茅野市民館で行われた事業「ごっこ遊びをご一緒に」の一部として、地域の皆さんと一緒に「茅野のCMをつくっちゃおう!」というプログラムがあり、じゅんじゅんSCIENCEの高橋淳さん(以下じゅじゅんさん)に誘っていただき映像の専門家として参加しました。
ある日、じゅんじゅんさんに「今日は音楽を担当してくれる山中さんが来るよ」と言われ、ダムタイプの山中さんが本番でものないのにわざわざ現地に来るの!?と驚きと同時にどんな怖い人がくるんだろうと緊張しました(笑)。
というのも芸大の授業で習った、あのダムタイプです。
野田秀樹の夢の遊眠社と同じく、もはや歴史的に有名なあのダムタイプです。
その創立メンバーなんて、絶対に怖くて厳しい人に違いありません。
そうおもって密かに身構えていたら、長身の全身黒づくめの服装でイカつい靴を履いたおじさん(すいません!)が来て、私の緊張感はさらに一段アップしました。
がしかし、事業のメイキングドキュメンタリーも併せて撮っていた私はバタバタで、ほとんど山中さんと会話できず、すれ違いのようにして終わりました。
ただ、後日にも同じ感想を抱くのですが、じゅんじゅんさんの要求にこのタイミングでも応えてくれるんだという驚きがありました。
数年後、ALL IS YOUR LIFEでじゅんじゅんさんの公演「街角」の再演に密着したのですが、そこで音楽を担当する山中さんと再び会うことになりました。
じゅんじゅんさんの創作は、とてもこだわる&緻密なタイプなので(是非、じゅんじゅんさんのシリーズ映像も見ていただきたい)再演とはいえ変更点も多々ありました。
その中で私が個人的にとても驚いたのは、山中さんが本番数日前でも作曲したシーンに対する、じゅんじゅんさんの要求に応じて平然と変更したり、新たなアイデアをもってきたりする、その様子でした。
私のそれまでの経験だと作曲にはやっぱり日程のデッドラインがあって、それを越えて要求したらぶち切れっぞというのが常識でした。
作曲じゃないですけど、フランシス・コッポラとゲイリー・オールドマンのドラキュラのエピソードが目に浮かんできます(笑)。
やっぱり作曲には時間と労力が相当かかるでしょうから…当然かとおもいます。
なのに少しもイラッときた様子もなくて驚きました。
加えて公演の音楽が凄く良かったのです。
あまりに良かったので音源が欲しかったのですが街角は販売しておらず、替わりに過去のThe Green Tableというダンス公演のCDを購入しました。
どちらかというとノイズだったり、アーティスティックな音楽の印象をもっていた山中さんの曲ですが、良い意味で大衆にも響きそうな美しさや魅力があり、不思議におもいました。
後日「エンニオ・モリコーネも好き」という話しを聞いて、妙に納得したのを覚えています。
再演の街角以降、会話する機会も増えて、東京で行われた山中さんのソロライブ「第七の封印 The Seventh Seal」を聞いたときに、視覚的な風景が浮かぶとは違う、何とも抽象的な表現なのですが、音楽…音の風景を体験したような印象が強烈にあって、これは取材してみたい!とおもったのが、今回のシリーズのきっかけです。
実際に密着してみると、とても優しい関西人です(笑)※ 初対面の方にも優しいです!
あと上記で感じた理由のことごとくが、とても腑に落ちる取材となりました。
他にも映画音楽の話や山中さんの幼少からの音楽遍歴、脳出血のことなど、様々な内容盛りだくさんで、どこまで映像で紹介できるかが悩ましいところです。
最後に表題の「楽観的なペシミスト」は取材のなかで出てきた山中さんの言葉です。
性格は楽観的だけど、ペシミスト(悲観論者)的な世界観も大好きとのこと。
言い得て妙だなーとおもいました。
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