ドキュメンタリーとの出会いと面白さ


今回はドキュメンタリーについて書いてみたいなとおもいます。

 

そもそもですが私は大学で映画を学び、演劇部にも所属してフィクションの創作に夢中な人でした。

今ほど誰でも映像を作れる時代ではなかったので、学ぶといっても基礎技術を教わる以外の専門技術に特化したようなものはなく(演出と脚本はあった)、24時間機材と施設が使い放題の牧歌的な学校でした。

ホワイトボードに何時から何時まで先輩のチームが使用とあり、その後に自分達のチームが使いますと書いて、返却されたバッテリー充電が全然間に合わへん!みたいな(笑)楽しい思い出が一杯あります。

今、振り返っても好き放題に作らせてもらえる贅沢な環境だったなぁ(教授の最後の講評会ではめっちゃ厳しく駄目だしされるのですが笑)。

その時期に映画と演劇をひたすら作りまくっていた経験はとても大きい宝物です。

 

なのでフィクションしか興味がなかった自分が、まさかドキュメンタリー映像を沢山作ることになるなんて夢にもおもっていませんでした。

 

その後、個人事業を始め、初のドキュメンタリー映像を作るきっかけになったのはニッポン手仕事図鑑さんでした。その撮影対象のウメハラカメラサービスさんとコンタクトを取り、撮影、インタビューしに行きました。確か途中で手仕事図鑑の編集長の大牧さんが合流してくれた記憶があります。

 

それまで事前に必ず絵コンテを描いていた自分が何のプランもなしにのぞむ初めてのドキュメンタリー撮影。
当日はとても緊張しました。

 

いざスタートすると一番大変だったのは進行するスピード感です。今日撮らしてもらえる作業内容はおおまかに把握していますが、基本的には普段通りの作業を撮らせていただくのでどんどん作業が進んでいきます(しかも熟練の職人ウメハラさん!)。今までは絵コンテを描いて、狙いのカットを1カットづつ押さえるようなスタイルですから、もう大変でした…というかそれすらいってる余裕が一瞬でなくなりました(笑)。

 

ワンオペ撮影なので、今起きていることを瞬時に反応と理解をして、アングルを決め、撮りながら編集のことを考え、何が撮れていて何が撮れていないかを考え、そうしながら次のレンズは何が良いか、交換するタイミングも計ります。かつ録っている音は割れていないか、小さすぎないか、ノイズが出ないかも気にしつつ、撮影時間全体のタイムスケジュールも気にしなくてはなりません。更には職人さんとのコミュニケーションも大事です。

 

またドキュメンタリー映像の大きな要素でもあるインタビュアーをすることも初めての経験でした。

事前に欲しい言葉を考え過ぎて、なかなかそんな言葉を話してもらえないことに難しさと焦りもありましたが、結果的には自分が想像していなかったことも沢山話してもらえて、本当によかったです。

あの頃はインタビュアーとして根本的な間違いをしていたなぁとおもいます。

 

そんなこんなの撮影をなんとか終えて、感じたことは『ドキュメンタリーって楽しい、面白い』でした。

 

まるで波乗りのサーファーのような(自分は全くやったことないのでイメージですけど)、演劇の芝居のような、ノンストップで反応、対応していく感じがゾーンに入る感じになるのです。

勿論、状況によっては職人さんにお願いして、再度同じ作業をしてもらうことも可能ですし、やはり撮影という非日常なのでお互いの都合を合わせることもあります。

ですが映画やフィクションとは違って、映像クリエイターが現場では圧倒的に受け身です。

まず目の前で起こるモノやコト、人があって、それをどう感じてどう受け取るかがあり、それに反応や応答したアウトプットがドキュメンタリーなのかとおもいました。

 

これは後に、私が好きな人たち(撮影監督ロジャー・ディーキンスや是枝監督)がドキュメンタリー経験を経ていることへの納得感につながっていきます(あくまで個人的な意見ですが)。

 

それは私自身がもっていたドキュメンタリー=リアルという印象や考え方が、ドキュメンタリーに関わっていくなかで変わっていったことによります。印象操作といったネガティヴなものではなく、人が見ることやリアルとは何だろう?ということにつながっていきました。

次回はそのあたりを書いていきたいとおもいます。